バスはもと来た道をたどり、僕と少女は今朝いたバス停に降り立った。そして少女の要望もあって、僕は少女を家まで送ることにした。
 その道筋、少女は突然、立ち止まった。そして、くるり、元気よく振り向くと、僕に抱きついた。
「うあ、」
 通勤、通学の人並みも消えた住宅街ではあるが、人の目が無いとはいえない。
 驚いてあとずさる僕の耳元で、「あの朝の少女」がささやいた。
「さようなら。楽しかった。妹によろしく言っておいてね、もう困らせないからって…。」