学校に行ってないのがばれたか。しかし、少女の強い口調、どうも穏やかじゃない。
 僕は、少女が電話を切り、顔をあげるのを待って話し掛けた。
「あのさ、僕と会ってくれるのはありがたいんだけど…、」
 少女の表情を覗き込んだ瞬間、僕は、今の少女が「あの朝の少女」ではないことに気付いた。今の少女は、僕が会社訪問の朝に会った、僕のことを知らないときの表情だった。
「あの…、私、どうしちゃったんでしょうか…。」
 この少女は僕を知らない。少なくとも今は。