「でも、」
 缶を両手で暖めながら、少女はうつむいたまま淋しげに微笑んだ。
「会えなくなっちゃったよね、あの後。」
 僕は横顔の翳(シャドウ)の訳を知りたかった。だが、それはよくないことの様に思えた。
 知りたい気持ちを紛らわそうと、僕は缶コーヒーを一気に飲み干して、タバコを探した。と、少女のコートのポケットで携帯電話が鳴った。
「あ、ごめんね…。モシモシ…、あ、母さん、今日はどうしても遅れるって、…違うわ、私じゃない。今日は絶対カエラナイ。母さんがどう言っても。」