僕は少女にねだられるままに雑貨屋の自販機でミルクティーを買ってやると、僕がコーヒーを買う間に少女は松林の方へと歩き始めた。
「海。海、海。早くおいでよ。」
 少女は振り向くと、僕の方を向いたまま後ろ向きに軽くステップを踏んだ。輝きの中で少女が弾む。僕は感傷に胸が熱くなった。やがて、砂浜が見え、水平線が広がると、少女は両手を広げて駆け出した。
「海だー。」
 僕に会えたからなのか、少女の無邪気には何のためらいも偽りもなかった。そのことが僕には嬉しかった。