「…ッ、」
 どん、と僕の背中に何かがぶつかった。僕が後を見た瞬間、立ち止まったところに、少女が追突したのだった。
「あ、…と、ごめん…、」
 やっと搾り出した僕の言葉に、少女は半歩後ろに下がって、えへへ、と笑った。
 予想外の反応に、僕は唖然とした。こちとら犯罪まがいの行為に、後ろめたさいっぱいの気分だったというのに、この少女と来たら、何の屈託もない笑顔を僕に投げかけている。
「昨日、挨拶、してくれたわよね。」
 少女は少し首を傾けながら、酸欠の金魚の様に口をぱくつかせる僕にたずねた。