バスはクラクションを一つ、転回場でぐるり回ると、街の方へ走り去った。
 春間近い晴天の下。海水浴場前、と書かれた、サビの目立つ小さな看板をはさんで僕と少女は並んだ。
 可笑しな光景である。季節はずれの海水浴場前停留所に、本来ならば学校に向かうはずの格好をした少女と、野暮ったい格好の若い男。しかも男は混乱している。僕のことだが。
 どうしようもなくて、僕はタバコを買いに停留所脇の雑貨屋に向かう。少女に背を向けて歩き出す。
 ほんの一瞬、ちら、と後に視線をおくってみた。その時。