バスが来て、少女が乗り込んだ。僕はそ知らぬ振りで、少女の後について乗り込み、中頃のつり革につかまった。
 バスが動き出す頃、ようやく僕の心に確かな罪悪感と後悔がこみ上げてきたが、もう後戻りのできる状況ではない、と覚悟を決めた。そして、車両のかなり前に座る少女の姿を視界に捉えながら、改めて車内を見渡す。
 確かに椅子は全て埋まり、乗客の半数はつり革やポールにつかまって立っていたが、この時間帯のバスにしては気味が悪いほど空いていた。