「オレの方は、もう少しシオンの様子を探る。やはり先日、神子たちを襲った車の運転手を操っていたのはシオンに間違いない」


紫貴はそう言うと、闇の中で紫に光る瞳で私の瞳を捕らえた。


彼の瞳に感情は見えない。


ただ、闇だけがそこに立っていた。


「紫貴、カナンたちの未来が見えているなら教えて」


紫貴は私から目をそらすと淡々とした口調で答えた。


「魂に封印をかけている者の未来が見えることは、ない。過去は別だがな」


「それじゃあ、私の過去も見えてるのね・・・」


紫貴はがっしりとした大きな左手を私の右頬に被せた。


ひんやりと冷たい手の感触が頬に広がる。


私は思わず目を見開いた。


紫貴から伝わる冷たい体温に、私の体と思考は動きを止める。


微かに、その紫の瞳に苦しみの色がにじんだ気がした。


「君の過去は、誰よりも切ない・・・」


紫貴・・・。


月によって生を受けたその時から、神子を護るために何度も「愛」を捨ててきた。


でも、私の「愛の魂」の封印を解かせるまでに至ったガードなど、一人もいなかった。



未来など見えなくても、「予感」がする。


紫貴。


あなたの孤独な魂に、私の孤独な魂が、


どうしようもなく




惹かれていくのを・・・・。