私の愛の記憶は、前世に遡る。


天使の泉。


そこはまだ、孤児院だった。


私は孤児として生まれた月の神子カナンとガードのトオヤとミズキを呼び集め、この天使の泉でまだ10歳の子供だった彼らを見護っていた。


その時、私は17歳。


私はまだ、完璧な「冷静」には少し足りなかったのかもしれない・・・。


憩いの場所「天使の泉」にも、私だけしか知らない場所があった。


いや、正確には、私と「闇」しか知らない場所が・・・。


屋根裏部屋の一室。


薄暗く常に闇に包まれたその場所に「彼」は夜になるといつも現れた。


「いずみ、カインの動きはどうだ?」


「ミズキはまだ子供だけど、能力は計り知れないわ。もしも、カインとして動き出せばとんでもない脅威ね」


「闇」はブラックコーヒーに口をつけると、切れ長な瞳を細めながら天井の一点を見つめる。


「闇」とは、彼のコードネームだ。


彼はカナンを護るガードの一人。


だが、彼の存在を知る者は私とカオリしかいない。


彼は裏の存在であり、月の表と裏のように、陽の光が当たる昼間には決してその姿を見せない。