もう一人

人を落とす時、相手が興奮して疲れた直後に相手に自分を意識させる。
そうすると相手は己の心臓の鼓動を恋によるものと脳で錯覚するのだ。
もちろん露骨にやり過ぎると違和感がある。
更に自分は平静を保つ事を余儀無くされる。
向こうが俺に恋愛感情を抱けば俺を落としにかかる。
それを見極めれば俺にとって都合が良い。
その時その時の段階でどれくらい向こうが俺に好意を抱いているのかが大体明確になる。
俺は今は待つ。
そしてチャンスを得たら、ここぞとばかりに食らいつく。
ただ捕食しに行くのは馬鹿のする事。
俺は五十嵐の事ははっきりいって嫌いだ。
頭の中がスッカスカで何も考えようともしない。
俺が話のレベルを向こうに合わせるのにどれだけ苦労しているか。
奴にとって難解な言葉。
それは会話で用いることが出来ない。
馬鹿を弄べるのならまだ良いだろう。
しかし俺は昔から馬鹿に振り回されている。
もううんざりだが、そんな今まで振り回された経験が帳消しになる程の事に俺はアイツを巻き込む。
馬鹿とハサミは使いようだ。
馬鹿を道具にし、俺が直接「もう一人」に干渉せず、尚且つ俺が指示しなくても馬鹿が「もう一人」を殺す状況を作る。
生きる為だ。
俺は今、手段を選べる状況じゃないのだ。
犠牲が伴うのは構わない。
俺は生きる。
ただそれだけだ。