もう一人

時間がゆっくりに感じられる。
一秒一秒が心にのし掛かる。
非常に鬱陶しい重苦しさだ。
俺の心は既に疲労の彼方。
この疲れがとれる日はいつになるのか。
まだ二日目。
けれど俺は追われているかのような気分だ。
自我を支配出来るのは自分だけだ。
だが俺は今、その自我に支配されている。
恐怖に弄ばれ自我に束縛されているのだ。
人は現状には抗えない。
違う未来に向かって前進する事が出来ても現状をねじ曲げることは出来やしないのだ。
現状は過去に変わるが、過去を変える事も当然出来ない。
俺がここまで来てしまった事実は絶対に変わらない。
この沼を抜けるのに「戻る」という手段は通用しない。
進めっ!前に進むんだ!
今を進まない者はいつになっても進まない。
とどのつまり沼に沈み続けるのみ。
腐った生き方でもひねくれた生き方でも前向きじゃなくても俺は構わない。
俺は慎重に、尚且止まらずに進む。
ストレートに生きるような馬鹿正直な人間が俺は嫌いだ。
世の中は美辞麗句を口にする八方美人で溢れかえっている。
だがはっきり言おう。
俺の望む正しさは「道徳的正しさ」じゃない。
俺の目指す目標は私利私欲の為の殺人。
自己中である事は承知の上。
だが世間体を気にする偽善者よりはましなはずだ。
本当は皆、「道徳的正しさ」なんて建前でしか尊重していないのだろう。