もう一人

今日は早く眠る必要がある。
だが不安は抱いておく方が良い。
危機感を持って生活をしなくてはならない状況だ。
人間は快適な状況下においては眠りに入りやすい。
エアコンを適温にして枕元の近くにラベンダーの香りのアロマポットを置いた。
そして鼻の通りを良くする為の物を鼻に貼った。
その後静かな音楽を流した。
あとは部屋の電気を消すだけ。
俺は部屋の電気を切るとベッドに入った。
そしてお気に入りのアイマスクを装着する。
今日はもう寝なくてはならない。
明日は洗脳計画を開始する大事な日だ。
計画を要約した内容はちゃんと携帯のメモ帳に保存してある。
後は明日にかかっている。
いつもと何も変わらぬ空の下で非日常が進行している。
そんな事を知っているのは俺と「もう一人」くらいの物なのだろう。
一人の人間が生まれるのは奇跡に近い。
だがその人間の中に全く同じ人間が二人存在し、どちらかが死ぬ。
もし神がいるのなら、それは命を冒涜する存在なのだろう。