もう一人

そして俺は掛け布団を体に被せる。
今日は疲れたが募る不安で眠れない。
だから本を読む事にした。
やはり小説という物は美辞麗句を並べたような物が多くて好きになれない。
俺はパラパラとそれを読みくずかごに放り投げた。
つまらない。
金を払った意味がない。
薄汚い淀んだ世界を描いた物語はないのだろうか。
美辞麗句を並べた文章よりどす黒い文章の方が俺は好きだ。
現実的な要素や人間の本来の姿を描いているだけあってそれなりに言葉に重みを感じる。
かといって学ぶ為に読んでる訳でもない。
心に、脳に言葉が響く感覚を味わう。
俺にとって…それが読書だ。
楽園よりもどん底の方が鮮明にイメージ出来る。
登るのは時間がかかるが落ちるのは一瞬。
これが現実だ。
世の偽善者達も本当は気付いているのだろう。
正直者は馬鹿を見る。
少しひねくれた人間の方が上手く生きれるのだ。