俺はメールを送る。
慎重に、好印象を与えつつ、自然に。
俺は気を使ったがやはり難しい。
しかしオープンな人間を装っている現状なら多少感情的に見えるメールにも違和感はないはずだ。
俺はこんな文を打った。
「明日映画見に行かない?(*^_^*)
映画館側のミスでチケット二枚あるから(^O^)
ちなみに映画は」
ここで一旦打つのを中断する。
明日公開されて今二席分予約出来る映画をネットで探す事にした。
あいつの趣味に沿った映画はあえて避けた。
この映画見た。
…なんて言われたら不都合だからだ。
そして思ったより映画は沢山あった。
夏休みだから混んではいるだろう。
しかし前日からの座席予約をすれば大丈夫なはずだ。
俺は映画を選び二枚のチケットを購入した。
そしてメールに書き加えた。
「ちなみに映画はテンホーズって奴。
麻雀わからなくても面白いらしいよ!(^^」
メールを書き終えた俺はメールを送信した。
勿論アイツが「映画館側のミスでチケットが二枚ある」という嘘を真に受けるとは到底思わない。
しかしそこは違和感を出すべき所だ。
「一緒に映画を見るつもりだけど素直になれない」という感情を装う為にこのような「嘘と悟られる嘘」をついた。
向こうに意識させる段階を終えたら洗脳に取りかかる。



テンホーズという映画は多分実在しません。
俺が適当に考えたこの小説の舞台に存在する架空の映画です。