もう一人

一ヶ月……その言葉が俺を怯えさせた。
何故俺がこんな事に巻き込まれたのだろう。
俺がこっちの世界の俺なのか………
もう一人がこっちの世界の俺なのか………
まるで検討がつかない。
そして俺はどうすれば良いか。
当然だが人等殺した事はない。
殺す勇気だってない。
だが死ぬ勇気なんて尚更ない。
俺が何を考えているかは神主もほとんど察していただろう。
神主はこう言った。
「長寿を望むのは人として間違ってはいない。
ただ残りの一ヶ月を太く短く生きるのも悪くはないだろう。
とにかく悔いのないように生きろ!
もう一人を殺すにしても殺さないにしてもな。」
俺は自分の生き方等どうでもよかった。
死にたくない…絶対に。
純粋でありたいとは思わない。
俺はもう…………
己が助かる道しか考えていなかった。
「もう一人は今…何処にいるんですか?」
俺は震えて声にならないような声で神主に聞いた。
「わからないな。
そして後はお前次第だ。」
「ちょっと待ってください!」
「私の手に負えない問題だ。
第一お前も『もう一人』も人間だ。
どっちの味方についても悪者になる。」
「そんな………。」
俺はこれ以上言葉が出なかった。