もう一人

夕方になり、僕は内藤の家を後にした。
外は寒くて肌にしみる。
そして僕は内藤の家の近くにある神社を訪れた。
僕はもう一人の事について色々知りたかった。
神主が僕の方を見るとこう言った。
「お前は見ただろう?
自分の分身のような物を。」
確かにこの目で見た。
しかし何故神主は人目でそれを把握したのだろうか。
それはわからなかったが神主さんに不思議な力がある事は感じていた。
僕は戸惑いつつも神主に聞いた。
「確かに見ましたが何か良からぬ事の前兆ですか?」
それを聞いた神主は少し間を開けてこう言った。
「お前の命は後……一ヶ月だ。
一ヶ月間の内に『もう一人』を殺めない限りは死ぬ。」
僕はあまり驚きはしなかった。
あの臆病者には人を殺す勇気等ないはずだ。
何かを背負って生きる等もっての他だ。
僕は勝算がある。
証拠を残さずに人を殺す自信がある。
何故なら僕と「もう一人」は全く同じ作りの人間だ。
現場に僕の髪や指紋があってももう一人の者だと考えられて犯人の遺伝子は検出されなかったという誤解を警察は受けるはずだ。
もう一人の家に入ってそこにある刃物を手に取ってもう一人を殺した場合どうなるか。
家を出ると周囲の人間には家の主が出掛けていると思われる。
遺体の腐敗の仕方や近所の人間の証言に矛盾が生じるから捜査を攪乱出来る。