もう一人

家についたら皆でゲーム。
そうだろうとは思っていた。
分かりやすい奴等だ。
僕はもう把握した。
こいつらの行動パターンを。
ただ一人……予測出来ない奴がいる。
それがこの男。
谷沢圭(やざわけい)だ。
こいつは皆の中に溶け込んではいる。
だが何処か異質だ。
こいつの笑顔には何処か光がない。
無駄な筋肉の動きがない。
まるで意識的に作ったかのような笑みだ。
周りに合わせているのは僕だけじゃないようだ。
朱に交われば赤くなる?
それは違う。
朱に交わった以上は赤くならなくてはならないのだ。
異質な者は集団において差別される。
これは確定しているのだ。
赤くならなくてはならない。
誰もが受け入れる人間にならなくてはいけない。
それが人間という生き物の選んだ生き方なのだから。
自分の意思が行動に繋がらない。
そんな事は他の生き物にはまずないだろう。