翠「先生、何見てはるんですか?」

賢「!? あ、ああ、神木か。」

私が声をかけると驚いた顔をする。

翠「びっくりさせました?」

賢「いや、そんなことない。」

ハハッと笑い手を振る阿部先生。

翠「…写真、ですか。」

先生が見ていた壁に目を向けると沢山の写真が壁一面に貼られていた。

白【……? おい、翠。その女…】

翠「ん?」

白棹が言う女性を見つけ、言葉を失う。

翠「……希美…さ…ま…?」

そこに写っていたのは四十代後半の綺麗な女性。

龍「ん?何してんだ?そんなとこで。」

そこに伊吹君が訝しげにこちらに近付いてきた。

賢「伊吹、この人がお前らの母親代わりか?」

阿部先生が指したのは先程の女性。

龍「ああ、美人だろ?」

柔らかく笑い、褒める伊吹君。彼もこんな風に笑うんや。

翠「名前は?」

龍「確か、兼山(カネヤマ) 希美だよ。」

それがどうかしたか?と聞いてきたが答えられる筈はなく

翠「いや、何でもない。すぐに何か作るから待ってて。」

ぱたぱたと逃げるようにその場を去る。

龍「何なんだ?」

賢「…………」