る。連れてきた責任があったにせよ、人の子供の方を優先して身を投げうって
救いだすなんて、誰にでもできることではない。そんな麻衣を、どうしてこれ
以上責めることができよう。美樹は、首を振りながら必死の思いを込めて言っ
た。
「麻衣さん、彩乃を助けてくれて本当に有難う。彩乃のことは、もう心配しな
いで。それより、彩乃のために麗奈ちゃんにもしものことがあったら、私、申
し訳なくって。でも、きっと、きっと麗奈ちゃんは助かります。神様は、麗奈
ちゃんみたいないい子を見殺しにするはずないわ」
「美樹さん、ありがとう」
二人の母親は、泣きながら手を取り合った。
その時、その様子をずっと物陰から冷たい目で傍観していた影が、すっと動
いた。美樹と麻衣の前に現れたのは、三品直美だった。彼女は嘲るような顔
で、切り口上に言った。
「麻衣さん、お芝居は、もうその辺でお終い
