終章



「やっと終わった」
 

 老人は、目を閉じ万感の思いで、あの不幸な日のことを振り返った。



 老人は、最愛の妻と、郊外の路地裏で骨董店を営んでいた。子供が独立して


から二人でヨーロッパを巡っては、好きな西洋の装飾品や調度類を収集してい


たのがきっかけで、趣味程度で出した店だった。それが、予想外に良い常連客


がつき、そこそこの利益をあげた。   



 そんなある日、老人夫婦に、想像もつかないような悲劇が訪れた。風邪気味


の妻を気遣い、早めに店をしまおうとしたその時、突然一人の若い男が押し入


ってきた。男は、冷酷無慈悲に老夫婦を縛り上げ、ナイフをちらつかせながら


金を要求してきた。老人は、店の売上金を全て男に差し出し、必死に命乞いを


した。男は、老人から奪った札束をポケットにねじこんで、もっとあるはずだ


と凄んだ。老人が、