さった。カッと見開いた小雪の目が最後に見たのは、彼女の返り血を浴びて赤
く染まった、息子の悲しそうな顔だった。崩れ落ちていく小雪の視線の中で、
それは徐々に小さくなり、やがて消えていった。
血の通わない冷たい物体へと変わり果てた母を茫然とみつめていた篤は、玄
関から人が入ってくる気配に気がつかなかった。
「篤くん、これは一体どうなってるんだ!」
いきなり大きな声がして振り向くと、すぐそばに酷く驚いた顔をした、ある
人物が立っていた。その時、篤の頭の中に浮かんだのは、玄関は確かに施錠し
てあったのに、彼はどうやって入ってきたのかという、単純な疑問だった。
「お母さんを殺したのか? よくやったな」
