「一応個人情報なので、規則では禁止ですけど、今回はいいでしょう。何か変
わったことがあったら連絡下さい」
小雪は、いそいそと石井のプロフィール等を自分の携帯にメモリーした。帰
っていく石井の若々しく引き締まった後姿に、名残惜しそうな艶っぽい視線を
送っている小雪は、完全に、母親である立場を忘れた一人の女になり切ってい
る。
篤は、息の詰まりそうな最悪の気分になった。
父が多忙を口実に、若い女と深い関係にあることは知っている。祖父が警視
総監になった頃から、小雪には別の人格が棲みつき、父や篤に対して傍若無人
になり、家族をおざなりにして、次から次へと若い男と遊び始めたのだから、
父だけを責めるわけにはいかない。物質面では満たされても、母親に見捨てら
れた篤の心はポッカリと深い
