3つのナイトメアー



「一応個人情報なので、規則では禁止ですけど、今回はいいでしょう。何か変


わったことがあったら連絡下さい」


 小雪は、いそいそと石井のプロフィール等を自分の携帯にメモリーした。帰


っていく石井の若々しく引き締まった後姿に、名残惜しそうな艶っぽい視線を


送っている小雪は、完全に、母親である立場を忘れた一人の女になり切ってい


る。


 篤は、息の詰まりそうな最悪の気分になった。


 父が多忙を口実に、若い女と深い関係にあることは知っている。祖父が警視


総監になった頃から、小雪には別の人格が棲みつき、父や篤に対して傍若無人


になり、家族をおざなりにして、次から次へと若い男と遊び始めたのだから、


父だけを責めるわけにはいかない。物質面では満たされても、母親に見捨てら


れた篤の心はポッカリと深い