「石井さん、さっきの家、どう思われます? 二階は犯人に荒らされた形跡は
なかったけど、あの息子の部屋には、壁にいくつものへこんだ跡があったんで
すよ。体は立派な大人なのに、働いてる風にも大学に行ってる風にも見えな
い。酷く陰気な顔をして、人とろくに目を合わそうとしない。あれは引き籠り
ってやつでしょうか? 顔に気味の悪い痣もあったし」
「山本、我々の任務は犯人を挙げることだ。事件は次々に起きる。余計な詮索
をする暇はないぞ」
山本は、刑事にしておくには勿体ないほどの、鋭利に整った石井の横顔に視
線を走らせながら言った。
「あの奥さん、石井さんを見る目が違ってましたよ。相変わらず女性にもてま
すね。奥さんと別れてから大分経つんですよね。ぶっちゃけ、あちらの方
