「貴之伯父さんって、本当に家の頑固親父の弟とは思えないほど、優しくて素
敵だったわね。決して、子供だからって頭から押さえつけたりせず、進歩的で
物分かりが良かった。私、小さい頃、何度伯父さんの子供に生まれて来たかっ
たと思ったか分からない。だから私、あんたには負けたくなくって、勉強だけ
は必死で頑張ったわ。大学に落ちた時は、本当に最悪だった。兄と重なるから
って、私は東京の大学に行かせてもらえず、浪人も許されず、行きたくもない
地元の短大に強制的に通わされた。屈辱だった。なにごとも男優先の、頭にカ
ビが生えた親父を、何度も頭の中で抹消したわ。父は私が短大を卒業したら、
交際にも口を出し始めた。私が好ましく思った男の人を、難癖をつけて片っ端
から追い払った。恋愛にいたる暇もないくらいに。これって、超悲惨じゃな
い? 父に若い青春時代を真っ黒に塗りつぶされた私は、父が勧める相手の中
で、最も生理的に受けつけない男と
