のだ。恭子は、優秀な両親から生まれたのに、昔から勉強が苦手だった。昔、
田舎で、成績の良い華代と比べられて、嫌な思いをしたことが頭に浮かんだ。
いくら勉強したって、受験に失敗したらそれでお終い。田舎でこつこつと勉
強してきた華代より、努力を怠ってさぼってばかりいた自分の方に、輝かしい
未来が待っている。
恭子はククッと、小さく笑った。一瞬、そんな自分が嫌だと思った。
それから数年の月日が経ち、恭子は二十歳になった。エスカレーター式の短
大を卒業した恭子に、縁談が舞い込み始めた。恭子は、恋愛と結婚とのボーダ
ーをきっちり分けていた。学生時代付き合ってきた、ルックスが良くて歩いて
いて楽しいだけの恋人はスポイルしていき、まず人に自慢できるような学歴と
収入を持つ相手にこだわった。中でも、母が翻訳をしている出版社の重役のつ
てで先日見
