わさって、昔からひどく女性にもてた。かつて、近寄ってくるたくさんの女性
の中から選ばれプロポーズされた母は、天にも昇る気持だったという。可南子
が現れなかったら、母はずっと幸福でいられたはずだ。それなのに、可南子へ
の憎しみと父への未練からがんとして離婚を承知しない母のことを、父の身内
達は、これまでの大人しい良妻賢母の殻を脱ぎ捨てた、夫を執拗に責め抜く悪
女だとののしった。色が黒くてギスギスとして女の魅力に欠けるくせに、いつ
までも貴之を束縛して、おまけに自分も相応の稼ぎがあるくせに、芸能人級の
高額な慰謝料を要求して、欲深い最低の女だと。かつて、正月に親戚中が集ま
った時、酒に酔っておどけて皆を笑わせた豪放磊落な姿を豹変させ、母の容姿
まで引き合いに出して責めてくる智伯父を、恭子は軽蔑した。それ以上に、あ
の固物の銀行員の智伯父まで、手なずけ蘢絡した可南子の生々しい女の魔性と
いったものに、母は観念したのだろ
