ぶるんと振った。
「夢であろうと、現実であろうと、とにかく私は無事でいる。朝になったら、
東京に帰れるようにママを説得しよう。可南子がパパと一緒だろうと関係な
い。東京こそが私の生きていく唯一の場所なんだから」
途端に目黒の住み慣れたマンションが目の前に浮かんできて、恭子は涙ぐん
だ。
翌日、恭子は母とE県の祖母の家を去り、東京に戻った。その日を最後に、
恭子は、二度と祖母の家に行くことはなかった。
東京に戻った母は、まるで憑き物がおちたかのようなさっぱりとした様子
で、てきぱきと前向きにことを進めていった。母は、父に、可南子と別れない
なら、とりあえずマンションを出て欲しいと言った。母のこれまでにない毅然
とした態度に、父は弁解の余地もなく、そのまま可南子のマンションで暮らし
始めた。優柔不断な父は、母になかなか離婚をきり出
