「しっ、恭子ちゃんに聞こえるよ。とにかく、美保子さんには全く落ち度がな
いんだし、貴之はこれからどうするつもりなんだろうね?」
こっそりと聞き耳をたてていた恭子は、嫌々と首を振った。父は、可南子と
仕事上だけのお付き合いではなかったのか? あの、優しくて、いつも自分の
ことを一番可愛がってくれる父が、よその女の人を好きになるはずがない。き
っと、体の調子を崩した母を田舎で静養させたいという、父の言い分の方が合
っているんだ。それなのに勝手に詮索して好き放題言って。だから田舎の人は
嫌いなんだと、恭子は、祖母、富美伯母、菊代おばすら憎んだ。
やがて買い物から帰ってきた母に、祖母たちはなにごともなかったように接し
て、恭子は、いとこ達と外で遊びはじめた。富美伯母の子供達、あきら、華代
も一緒だ。恭子は、彼らの母親の会話を思いだし、始終不機嫌に八つ当たりし
た。炎天下の中、こんな田舎で、
