苺恋唄-イチゴコイウタ-

春の夕方はまだ冷える。


少し空を見上げて息を吐いた。



「寒い…」



一言呟いて、また俯く。



「隣いい?」



聞き覚えのある声に、私は勢いよく顔を上げる。



そこにいたのは、やっぱり彼だった。



「…どうぞ」



少し迷ったけど、断る理由もないと思ってそう答えた。



「鳴海さん寒くない?」



「なんで私の名前…?!」



「さっきテスト拾おうとした時に見ちゃったんだ。ごめんね…?」


ずっと話したかった人と話せてるのに。


こんなに近くにいるのに。



どうして上手く喋れないんだろう…。


言葉が出てこない。




寒さのせいなのか、

緊張のせいなのか、


身体が震える。



そんな私を見ていたのか彼は、学ランをふわりと、私に羽織らせた。



「春でも夕方はまだ寒いよね。バス来るまで、それ羽織ってなよ」


さっきも思ったけど、彼は優しい。



「でも、あと一時間はかかるよ?」



「そうなの?じゃあ俺も一緒に待ってる」



いいのかな…?


私がじっと見ていたせいか、彼は不思議そうな顔をしていた。


それからニコッと笑った。