Down Mountain Field


顔を洗って鏡にうつる姿を見ます。
どう見ても茶色くてシワの刻まれた中年男性の顔。
こんなに若返りたいと思ったのは何年ぶりでしょう。


「あいうぉんちゅー・・・」


今朝は気分がいいです。
自然と歌いはじめてしまいます。
何年も買い替えていない歯ブラシ。
バサバサで黄ばんだ歯ブラシも
久しぶりに買い替える気になりました。

パンツを裏返してまた履くと、
ここしばらく洗っていなかったシャツを
羽織りました。






僕は毎朝地下鉄で学校へ行きます。
何も知らないふりをして女性専用車両に乗るのが
いつもの僕ですが、もう今の僕の視界に
女性などという生き物ははいらないのです。

僕が電車に乗って届かない吊革をあきらめて
鉄の棒をつかんでいると、誰かが僕の肩を
ぽんぽんと叩きました。


「おはようございます。上山田さん。」


「誰ですか?」


白衣を来た中年男性が立っていました。


「まあ、塚ちゃんって呼んでくださいよ。理科の教師をやってるんですけどね」