Down Mountain Field


「上山田先生の彼女はきっと詐欺をしようとしていると思うのですがねえ」


俺は立ち止まった。


「上山田先生のようにプレーンのような顔をしている人は女性に人気がないでしょうからね。」

「・・・」

「どうして私があなたに上山田先生の情報を流していると思いますか?今まで何年も同じ職場で働いてきて一度も疑わなかったのですか?私がゲイだと。」


後ろで塚本先生が立ち上がる気配を感じた。
薬品の匂いが鼻をかすめた。
その時、また塚本先生の袖口についていた赤を思い出した。
もしもあれが本物の血だったとしたら・・・

俺はすごい勢いで駆けだした。
何回か後ろを振り返ったが、塚本先生が追いかけてくる様子はなく、ただそこにたたずんでいた。

松下先生がものすごい勢いで逃げて行ったあと、塚本先生は一人、階段の下に残された。松下先生の靴から落ちたスタッズを拾うと、<松下先生>と書かれた袋に入れて封をした。塚本先生のコレクションの中で松下先生専用の袋が断トツで大きかった。塚本先生は松下先生の袋を愛おしそうに眺めた後、鞄にしまった。


「私の気持ちはいつ伝わるのでしょうかねえ・・・」


塚本先生は聞こえるか聞こえないかぐらいの声でポツリとつぶやいた。