Down Mountain Field

押し倒された瞬間、隙間から上山田先生がこっちをみてるのに気付いた。
さっきまで昆布色だった顔が今はゴキブリみたいな色になっていた。
しわくちゃな顔で目からは涙がベタベタ流れていた。
また俺のせいで上山田先生が傷ついてしまった。


俺が声をかける前に上山田先生はヨロヨロしながら帰っていってしまった。
ふと気付くと佐藤先生と俺の唇の距離は1㎝もなかった。
カサカサで所々切れている佐藤先生の唇が。


「やめろってば!!!!!」


折れそうな佐藤先生の肩を思いっきり押すと佐藤先生は尻もちをついた。
佐藤先生の唇が荒れていたからイライラしてるんじゃない。
上山田先生を傷つけてしまった自分が憎かった。
自分でも薄々気づいているこの気持ちを認められない自分が憎かった。


「まっ、松田先生・・・いかないで!!」


去ろうとする俺に佐藤先生はすがりついた。


「私はあなたなしじゃダメなの!一生のお願いよ!」

「俺には・・・好きな人がいます。」


佐藤先生を遠ざけるためじゃない。
俺の本心。


「俺には、愛する人がいます。」