Down Mountain Field

職員室を出て佐藤先生と階段を上がっていく。
佐藤先生からは線香のにおいがして「年なんだな」と改めて実感した。階段を上がる途中に見えたパンツはただの茶色いパンツじゃなくてよく見ると菊の柄で、なんだか切ない気持になった。

屋上に着くと、ひと組のカップルがイチャイチャしていて、俺たちをみると「まずい」という感じの顔をして固まった。たしか女の方は全身黄色だった気がする。佐藤先生はそんなの無視して俺をさりげなく人目の付かないところへ誘導した。噂になったらどうするつもりなんだ・・・


「松下先生・・・」


佐藤先生は俺を見上げた。
どこかの若者向け雑誌で学んだ、さりげなく袖をつかむ小技を使いたいのか俺の腕らへんをまさぐっていたが、今日は腕まくりしてるのに気付くと「チッ」と軽く舌打ちをした。


「私、あなたの事が好きなの。こないだの夜は松田先生と一つになれなくてすごく残念だったわ。お願いだから・・・私と付き合ってくれないかしら?」


とうとう言われてしまった。
今日これを言うために朝から念入りに化粧してきたのか、ファンデーションを厚塗りしすぎてまつげまで真っ白だった。


「佐藤先生・・・」


俺が答える間もなく、佐藤先生は俺を押し倒してきた。
下から見上げる佐藤先生の顔はなんともババくさかった。ニヤッと笑った佐藤先生の口の中は銀歯だらけだった。


「やめてください」


俺は佐藤先生を押しのけた。