Down Mountain Field

カノコが脂取り紙を使ってる間に俺はさっさと離れて席について弁当箱を広げた。今日の俺の弁当はサラダパスタだ。上山田先生にもサラダパスタを作ってあげようかと思ったが、日記に好きな食べ物がいちごだと書いてあったからやめた。代わりにいちごたっぷりのいちご弁当を作ってあげた。きっと喜んでくれるはずだ。


「松下先生!その弁当、健康的にイマイチじゃなあい?」


そういうカノコの弁当は唐揚げと海老フライだったが何も言わないでおいた。

ふと視線を感じて斜め前をみると、佐藤先生が目で何かを訴えていた。そういえば今朝俺のスーツから屋上に来いって書いてあるメモがでてきたんだった。すっかり忘れていた。最初は無視していたが、佐藤先生のしわくちゃな目がうるんでるのを見て、「年寄りは大切にしなさい」と言った母を思い出した。仕方がない。いざとなったら俺の方が力は強いから大丈夫だろう。


佐藤先生が職員室を出た。スカートが折れていつもの茶色いパンツが見えたが、何も言わないでおいた。
俺も出ようと立った瞬間、視界の端に上山田先生が見えた。
納豆みたいな顔が、今は昆布みたいな色になっていた。