Down Mountain Field

家に帰ると誰もいないようでした。
松下先生がいなくて少しほっとしている僕がいました。
屋上での出来事を思い出したくありません。


僕は中学生のころから使っているアディダスのエナメルをおろして靴を脱ぎ、リビングへ向かいます。リビングから見える松下先生のベッドの上は綺麗に整理されていて僕の布団は朝起きたままぐちゃぐちゃに置かれています。これが僕と佐藤先生の差でしょうか。家庭科の佐藤先生なら毎朝起きてすぐに布団を綺麗にたたみ、病院で出される朝ご飯ぐらい栄養満点の朝ごはんを作るでしょう。薄汚い茶色のエプロンを着て「おはよう、あなた」ってしわくちゃの笑顔を松下先生に向けるでしょう。

それに比べて僕にできることと言ったら朝起きて歯を磨いて、整髪料の代わりに皮脂で髪の毛を固めて、イチゴヨーグルトをだしながら「おはようございます、松下先生」と微笑むことぐらいです。

僕は拳をにぎりしめてうつむきました。
僕は知っています。
やはり男が男を好きになることなど許されないのだと。

すると不意に後ろからフワッと良い香りが漂ってきて、気付くと僕は抱きしめられていました。僕より頭2.3つ分大きい松下先生が僕を抱きしめていました。

「まっ、松下先生・・・」

「・・・・帰ってくんの遅せーよ」

敬語じゃない。
意地悪モードの松下先生です。