Down Mountain Field


塚ちゃんは鞄から袋を取り出すと、一人ひとり見比べ始めました。

「この髪の毛は石鉄先生のものなんですよ。おっと、これは上山田先生の髪質と似てますがスーツのものとは違いますねえ。これは古田先生のものなんですよ。残り少ない髪の毛を頂戴しましてねえ。んー・・・古田先生の髪の毛はか細くて合いませんねえ」

スーツについていた毛はおそらく松下先生のものです。
このままだとバレてしまうのも時間の問題です。

「これはどうですかねえ。」

そういってとうとう塚ちゃんは<松下>と書かれた袋を取り出しました。
絶体絶命です。
しかし・・・

「これは違いますねえ・・・」

塚ちゃんは袋を鞄にしまいました。
どういうことでしょう・・・?
そんなはずはないのですが・・・

「これはどうですかねえ。」

塚ちゃんは<佐藤>と書かれた袋を取り出しました。
松下先生のもので無いのなら、もう塚ちゃんには誰のものかわからないでしょう。
僕はボーッと窓の外を見ていました。
窓の外と言っても地下鉄なので壁ですが。

「あっ!これですよ!」

塚ちゃんがいきなり叫びました。

「えっ、そんなはずは・・・」

「いいえ。これは完璧に佐藤先生のものと一致します。」

「佐藤先生と面識はないのですが・・・」

「しかし、完璧に佐藤先生のものと一致するんですよ。どういう関係なんですか?」

塚ちゃんはニヤニヤしながら僕を見てきます。

「佐藤先生は何の先生ですか?」

「家庭科の先生ですよ~知らないふりしちゃって」

塚ちゃんはニヤニヤした顔でまだ僕を見ています。
一体誰なのでしょうか・・・
どうして僕のスーツに毛がついていたのでしょうか・・・