Down Mountain Field


朝は誰にもばれないように別々に家をでることにしました。
僕のほうがクラスをたくさん持っていて忙しいので先に家をでます。

松下先生の家から地下鉄まで、寒い道のりをテクテク歩きます。
今日はとても寒いです。
そろそろ雪が降りそうです。

そういえば、僕は雪があまり好きではありません。
高校生のころに好きだったクラスのマドンナ的存在の子に告白してフラれた日。
帰りに雪が降っていたからです。
その日から僕の中では雪とは失恋の象徴なのです。

地下鉄からいつもの電車に乗ります。
当然女性専用車両をさけて乗ります。
すると、塚ちゃんに出会いました。

「あ、上山田さん。久しぶりですねえ」

塚ちゃんは前会った時と同じように白衣を着ています。
彼は私服も白衣のようです。

「おはようございます」

僕は届かない吊革をあきらめ、棒を持ちました。

「おっと。上山田さん。」

「なんですか?」

「これは・・・」

塚ちゃんは、僕のスーツから一本の髪の毛をとりました。

「上山田さんより少し茶色っぽくて癖のない髪質・・・根元にフケはついていないし・・・これは上山田さんの髪の毛ではないですね。」

「・・・」

「僕はいろんな人の髪の毛を集めるのが趣味なんですよ、こんなぐあいに」

塚ちゃんは、僕に鞄の中を見せてきます。
小さい袋に小分けされた髪の毛が入っていて、名札が貼ってあります。