伯爵と妖精～祝福を彼らに捧げて～

二人が部屋に入って、出てくることは無かった。


ホールの人だかりの中に、まばゆい金髪の男性が貴族と会話を楽しんでいた。
「伯爵の若君とお嬢様は、伯爵に似て美男美女ですな」
一人の貴族が笑いながらエドガーに話しかける。
「アテネが美しいのは妻に似たからですよ」
微笑み少し離れたところにいるリディアを見つめる。
「全く、伯爵の蜜月は終わることは無いようですな」
「僕は妻にいつでも恋をしていますからね」
自慢の妻だ。純朴で、可愛いらしくて、何より大切な存在である。
リディアの会話をしていたら、「エドガー」
名前を呼ばれ振り向くとリディアが少し焦った様子で、エドガーを見つめていた。
「エドガー、さっきからティルたちが見当たら無いの」
当たりを見渡すが、姿が見えない。
「何処かに行ったのかな？」
ティルは人だかりがリディアに似て、あまり好きでは無いので姿が無いことはよくある。
「さっきから妖精の歌声が聞こえるの、まさかとは思うけど…」
ティルとアテネにも妖精が見えるのだ。
そのため、今までも勝手に妖精界へ潜りこんでしまう場合がしばしばあった。
「手が空いている召し使いと探そう」