柚紗には結局、言えてない。
ふたりだけになるときはあったけど、話の切り出しかたがわからなかった。
それに、柚紗の傷つく顔は見たくない。
「翔、どうした?」
「え?」
「さっきから、ぼーっとしてるけど。ほら、キャッチボール」
はっとすると、ボールはあたしのグラブの中にあったままだった。
「あ、ごめんごめん。ほらよ」
いけない、いけない。
ずっと自分のこと考えてた。
あーもう、ちくしょう。
あたしの投げたボールは千昭のグラブの中に収まっていった。
しかし、千昭からボールが返ってくることはなかった。

