長くて短い夏休みが終わり、学校全体が文化祭に向けて準備を進めていた。


「翔、あと今日は10個だって」
「あーい、了解。いや、あんたらも作れや」


あたしは、装飾係になってお花を作っていた。


「えー、翔うまいじゃん。うちら作ったら、変なのできるよ」
「うがーっ、頑張れやー。あたしだってうまくできないし」
「翔ファイトファイトーっ」


とは言っても、こう見えて手先は器用なほうだ。
お花とか作るのも、結構楽しい。


「翔、彼氏きたよ」
「はあっ!?」


彼女らの向く方向を見てみると、千昭が荷物をまとめて歩いてきた。


「いっ、いや彼氏じゃないし」
「まだー?いい加減付き合っちゃえよ」
「そうそう。みんなお似合いだーって」


そんな簡単なものなら、もう告ってる。
玉砕することは間違いないけど。
それ以前に、あたしには柚紗という壁が待っている。


どっちも手放したくないし、どっちも壊したくない。


「翔まだー?荷物重いんですけどー」
「あっごめんごめん、今終わるから」


急いで出来た上がったお花を先生に提出しに行き、そのままふたりで教室を出た。