「なにか飲み物買ってくる。雪乃ちゃん、何がいい?」


「そんな、私も一緒に行きます」


「いーからっ。で、何がいい?」



一緒に立ち上がろうとした私の肩を押さえると、先輩は笑いながらも、有無を言わせないような口調で再び聞いてきて。



「…じゃあ…オレンジ、で…」


「ん、了解」



先輩は優しく笑うと、ぽんぽんと頭を軽く叩くように撫でてから近くの売り場まで行った。



(オレンジで…かぁ…)



最近、何飲む?って聞かれれば、毎回“オレンジ”って答えてる気がする…。


べつに特に好きだってわけでもないけど、夏輝先輩に聞かれたときは、

気づいたらそう答えてる。


初めて夏輝先輩の家に行ったときに出された飲み物がオレンジジュースで、

私が飲むのを見ながら、「新鮮ー」なんて笑われた。


あの日からきっと、先輩のことが気になって…好きになった。



だからいつの間にか、私の中で特別な飲み物に変わっていったんだと思う。



単純だけど、私にとって、大切な思い出。