しばらく会話を弾ませた二人。

このまま時が止まってしまえば良い 
燐太はそう思っていた。

だがそんなことはありもしない。

唐突に華那が腕につけているピンク色の時計に目を落とす。
すると彼女は顔を真っ青にして燐太の方を見た。


「大変!もうこんな時間…おじいちゃんに叱られちゃう…!」

「え…あ、そうなの?」

「うん…ちょっと呼び出されてて、ちょっと行くのヤだったからここに来たんだ。そうしたら燐太くんがいたからさっ」

「あっ…俺、もしかしてすっげぇ邪魔だった?ごめん…」

「ううん。そうじゃないよ?燐太くんと話せたからちょっと元気出た!ありがと!!」


とびっきりの笑顔。
燐太は今日のこの短い時間の中で
何度この笑顔にやられそうになったことか。


「ん、そう?なら良かった」

「うん!それじゃ、またね!」

「うん。また…」


長い髪をなびかせて
中庭を去って行く華那の後ろ姿を
ただ
燐太はみつめていた。

今は
今はただ
見つめることしかできない。

果たして
燐太のこの想いはどういう方向へと
コマを進める事になるのだろうか。