「(あーあ…先輩もいないし知らない奴ばっかりだし…こんなことなら昨日ちゃんと把握しとくんだったなぁ…失敗したわ…。)」

特にすることもなくただ呆然と教室のなかを見渡す燐太。

教室のドアが開いて担任が入ってくる。


「ほらー!席について!HR始めるよ!」


どことなく孤独感を感じつつ、HRが始まった。


「昨日ぶりだね!皆高校一年生エンジョイしてるか?もう友達ができた人もこれからの人も楽しんでいきましょう!と、いうわけで…」

担任が出してきたのは、プリント。


「今日は自己紹介カードを書いてもらって、次の時間に一人ずつ自己紹介をしてもらいたい。昨日はバタバタしてて出来なかったから、今日やる。本当はきのうやる予定だったけど。内緒。今日やれば多分問題ないから!!」


などと笑いながらプリントを配り始める担任。

大丈夫かこいつとおもいながらプリントを受けとる。

と、燐太の顔を見た担任が目を丸くして話し掛ける。


「相原くんだね!?いやあ昨日いなかったからびっくりしたよ!!大丈夫だったかい?あ、俺はここの担任になった山沢京一郎って言うんだ。教科は現代文。よろしくね?」

「あ、はい…。」


手を握られて自己紹介をする担任に軽く会釈をして燐太は下を向いた。


この男。話す距離が近い。


大きく丸い瞳に整った顔立ち。
爽やかな口臭。


「(現代文とか嘘だろ…絶対たいいくかい系だろ…)」


後ろにプリントを回しつつ


担任を見つめてそう思った燐太であった。