「あれから連絡は?」
愛梨は鏡に映る自分から
視線だけを私に向け尋ねる。
私は携帯を開くとまた直ぐに閉じ、
力なく首を横に振った。
拓真に振られて1週間、
理由も分からないまま拓真からの連絡はない。
「それにしても何でまたいきなり。
拓真、希のことあんなに好きだったのにね」
愛梨は再び鏡の中の自分に
視線を戻すと、怪訝そうな表情で
鮮やかなピンク色のグロスを唇に塗る。
愛梨とは中学校の頃からの仲で、
私と拓真のこともよく知っている。
拓真がどれだけ私のことを
好きでいてくれたかなんて
今となっては分からないけど、
愛梨の目にそう映ってたのは確かみたい。
それだけで今はちょっと、嬉しい。
