君が星こそ悲しけれ。


それならば私に用事なんて
ないはずなのに、その場から
動こうとしない彼を私は不思議に思う。


もしかしてナンパ?


いやいや、それは考え難い。
ナンパするほど彼は女に困ってないはず。


「あのさ」


突然声を掛けられ私の肩は反射的に揺れ、
「はいっ」と咄嗟に出た声は裏返ったような気がする。


そんなことは全く気に留める
こともなく、彼は言葉を続ける。


「さっきここに女の人通らなかった?
髪が長くて、身長が高くて綺麗な人」


彼はそう言い終えると、
再び煙草を口に咥えてその先に
手慣れたようにZippoで火を点けた。