「どうしてもだめなのかな?」

「ごめんね。」

私はそれ以上言葉を見つけられなくて車を降りた。

“あーぁ、やっぱりまただめだった。”

もう何度目かわからない、どんな人と付き合ってもいつもたどり着くのは同じ結果だった。

夕方のオレンジ色の空を見上げたら自然と涙がこぼれてきた。

泣いているのは、今さっき別れた男のせいじゃない。あの人じゃなきゃだめだと実感してしまったからだ。


 次の日、いつもと同じ時間、小さな駅のホームに彼は立っていた。

「涼!おはよう。」

「あぁ、奈月、おはよう。」

「今日も暑くなりそうだね。」

「ほんとだね。」

「あっ、電車来た。部活もいいけど、勉強もがんばれよ!」

「うるせー。」

電車が去ってしまってから私は思いきり深呼吸した。まだ心臓がドキドキしている。自然と顔がにやけてしまう。

“よし!今日も一日がんばろう!”

これが私の日課だ。


涼とは高校一年の春、駅のホームで初めて会った。

初めての電車通学で緊張していた私は調べていた時刻より二本も早い電車に乗ろうとしていた。あまりに早すぎたせいで周りには学生らしき人は見当たらなかった。

“どうしよう…。早くきすぎちゃった。”

自分が場違いな人に思えてとりあえずホームの一番奥まで進んだ。

下ばかりみて歩いていたせいで人影が見えた時にはもうぶつかっていた。