声を発したのは、レクシスにロッソネ―ヴェを受けたキメラだった。

「お前…」

キメラのギラギラとした目が明希に向けられた。

「リルダの娘か、奇遇だな」

ゆっくりと、キメラの体が人間へと変わっていく。
真っ黒なスーツに長い足がやけに目についた。

「…っ?!なんで…どうして人になるの!?」

「気をつけて明希。あいつ…普通のキメラじゃない」

レクシスがログハウスから出てきた。
手には長い杖を持ち、その先端には青い石が付いている。

「その杖は…?」

「これは魔力を増幅される魔道具。…でもこれ、父さんのだから上手く使いこなせるかどうか分からないけどね」

覚悟をしたようにギュッと杖を前に構えた。
明希も手を前に出す。


キメラが鼻で笑った。

「なかなか面白い…。おい、レイム」

「はい…?」

燃え盛る建物から一匹のキメラが出てきた。
頭がニワトリで胴と手足が鷹、尾は猫。


「…うわ~。普通にありそうなキメラだなぁ」

「珍しい、バラバラめちゃくちゃじゃない組み合わせ」

「し…失礼な!これでもキメラだ!」

必死に言っている所を見ると結構気にしているようだ。
やっぱりバラバラな組み合わせじゃないと変なのかな?と明希は思った。

バタバタと羽根を動かすレイムと言われたキメラはキメラ人間に平手で叩かれた。
パシンと小気味のいい音がした。リアルに痛そうだ。

「お前も一応幹部だろ?この小娘達を始末しとけ」

「「っ?!」」

「わかりましたよ、兄貴。おまかせあれ」

レイムの顔が除々に人間の顔へと変わっていく。
すべてが人型になり、下げていた顔を上げた。
血のように赤い髪に、稲光を思わせる黄色い目。
ダボッと着崩した服に身を包み、不敵な笑顔を浮かべて立っていた。

「キメラって普通、人間になるものなの…?」

「いいえ、ならないわ。私も初めて見た」

二人はお互いに背中を合わせた。

「ふぅ~ん、互いに自分の後ろを託すのか。なかなかの度胸っスねぇ」

レイムは二人を嘲笑った。

「うるさい!」

再び明希の手に光が集まる。
そして明希はそれを一気に相手に向かって飛ばした。
光は一直線にレイムに向かっていく。

「いけぇぇーーっ!」