「今朝、先輩と裏庭にいたんです。

チョコレート、作ったの食べてもらおうと思って……」


って、あたし何言ってんだろう。

さっさと本題に入ればいいのに、こんなまどろっこしい説明いらんし!!


「久遠は優しいかい?」


優しい……。

とっても残酷なほどに。


とても優しい…………。



うなずくあたしの顔が、少し悲しいものだったのだろう。

あたしの顔を見た葛野先輩は、「そっか」と苦笑していた。


「ねぇ、手鞠ちゃん。

どうして久遠が好きなの?


言っちゃなんだけど、久遠は明らかに君とは合わないだろう?

君はとっても純粋な娘だ。


それなのに…………」



そう。

そうだね。


たしかに、麻生先輩のこと、あの日、人魚になったあの日に逢ってなかったら、

あたしは惹かれてなんかいなかった。



特定の彼女さんをつくらない、タラシな人なんて、最低だと思った。


でも、でもあたしは、海の中、麻生先輩と出逢ってしまった。



優しい部分に触れてしまった。

恋を……知ってしまった。




「麻生先輩は、困っていた時に助けてるれくれた命の恩人なんです。

麻生先輩は忘れてるかもしれないけど……助けてくれて、とっても嬉しかった。

葛野先輩も、きっとそんな麻生先輩が好きなんですよね?」


だから、葛野先輩っていう優しい人が友達になってるんだよね。