∮ファースト・ラブ∮


慌てふためくあたしに、先輩はさも当たり前のように話す。

「昨日、ぼくに寂しい思いをさせたからね」

いや、あの、先輩!!

だから、先輩は寂しい思いなんてしないでしょ?


「あたしもベンチに座りたいです!!」

「却下」


…………う。

「手鞠ちゃん。

あ~ん」


あ~ん?


先輩は大きな口をあけてあたしを見る。


「あ~?」

先輩につられて大きな口をあけると、中に何かを放り込まれた。


「ん!!」

口を閉じたら、中に放り込まれたものが何かすぐにわかった。



チョコレートだ。


先輩の手元を見れば、さっき、あたしが渡したチョコの箱の封が開いていた。



どうして?

なんで先輩はあたしが作ったチョコレートをあたしの口に入れるの?

先輩に喜んでほしくて一生懸命作ったのに。


先輩……食べてくれない……。