∮ファースト・ラブ∮






「先輩!!

おはようございます」



次の日の朝、麻生先輩の登校時間を狙って、女の人たちに囲まれている先輩の前に立つ。



――うう。

先輩にぴったりくっついている綺麗な女の人たちが怖い。


こっち睨(にら)んでるよ~。

でもでも、あたしも先輩好きなんだから!!

負けないもん!!




「おはよう。

手鞠ちゃんは、今日も元気だね」


相変わらず、先輩はカッコいい。

鼻にかかった声があたしの胸をズキュンと攻撃してくる。


先輩が話すたび、あたしの心臓はドクドクと脈打ち、

体中の血液が流れるのを感じる。

生きてるんだって実感するの。




元気に見えてよかった。

ほっと息をつくのもつかの間、

カバンからピンク色をした掌サイズの箱を取り出した。


「先輩、これ。

よかったら食べてください」


両手で手渡せば、笑顔で受け取ってくれた。



「食べてってことは……お菓子、かな?」


「はい!!

頑張ってつくったんです」



お料理苦手だけど、先輩を想って一生懸命つくったんだ。

食べてくれたら嬉しいな。



「ありがとう。

う~ん。

まだ時間はあるね。


裏庭、行こうか」



先輩はシルバーの腕時計を見ると、あたしの手をとって歩きはじめた。



「ちょっと、久遠!!」

「やだぁ~」

「わたしもいきたい~」


後ろでは女の人たちが先輩を呼び止めている。

だけど、先輩は気にも留めずに真っ直ぐ進んでいく。